きときとライナーに乗って分かった富山発名古屋行の利便性

公開日:2015/4/10

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きときとライナー車体

富山から名古屋までは約240km。時間にするとバスも鉄道も変わらない。
乗換えのない分らくちんな高速路線バス【きときとライナー】の乗車体験記。

≪目次≫
1.はじめに
2.富山⇔名古屋を運行しているバス会社
3.きときとライナーの基本情報
4.車内設備と道中の様子
5.お得に移動するなら「きときとCLUB」会員
6.豪雪地帯での休憩風景
7.名古屋に到着
8.まとめ(良かった点、鉄道との比較)

1.はじめに

雪の降りしきる2015年1月末。僕は越中、富山県を訪れていた。
富山と言えば、2015年3月14日に北陸新幹線が開通。 軽井沢を経由し、東京⇔富山をわずか2時間8分で結ぶ、夢の首都圏移動が実現することで今まさに活況なエリア。北陸新幹線は富山を越え、石川県金沢まで到達する。 在来の高速路線バスはおろか、地方空港に拠点を置くLCLにも多大な影響を及ぼすだろう。

今回の調査では、敢えて関東方面ではなく、西回りと言える北陸⇔東海方面に目を向けてみた。
事前調査の結果、この路線は鉄道よりも高速バスでの移動が主流のようなのだ。
バスでの移動がどれくらい便利なのか確かめるために、富山へやってきたのだった。 きときとライナー 高岡営業所

※今回お世話になったイルカ交通さんの高岡営業所。イオン高岡のショッピングモールの目の前

2.富山⇔名古屋を運行しているバス会社

調べてみると富山⇔名古屋は、3系統4社が運行していることがわかった。

◆富山県から名古屋への運行バス詳細 (2015.3.15現在)

名鉄バス/富山地方鉄道 加越能バス イルカ交通
1日10往復(20便) 1日5往復(10便) 1日5往復(10便)
富山⇔名古屋 高岡・氷見・砺波⇔名古屋 高岡・砺波・小矢部・五箇山⇔名古屋
4,630円 3,000円~3,500円 3,500円
4列シート(トイレ付) 3列独立シート(トイレ付) 3列独立もしくは4列シート(トイレ付)
始発6:20発/最終19:00発 始発6:30発/最終17:30発 始発6:30発/最終18:25発

全てが昼行便で、夜行バスは1つもない。 走行距離は約240km、3時間30~40分の行程だ。
どのバスも同時刻に出発することはないようなので、合計1日20便走っている。
つまり日中、40分に1本の割合で出発している計算だ。
このあたりは同じ【バスラボ】執筆メンバーが「富山⇔名古屋」の記事をあげているので参考にして欲しい。

◆富山発名古屋行、高速バスを徹底解剖!

◆名古屋から富山へ行く、高速バス徹底比較!

面白いのは、同じ富山県の出発とはいえ、各社によって県内の勢力圏が異なる点だ。
富山地鉄は富山市、加越能バスは高岡、氷見。
同じ高岡に拠点を持つイルカ交通は、さらに小矢部や五箇山といった富山の南西部にも停留所を持っている。

小矢部ってどこだ? 五箇山って合掌造りで世界遺産登録された場所とちゃう?
そんな興味がむくむくと沸き起こり、このたびの体験乗車はイルカ交通と相まったのだった。 きときとライナー車体

※ひときわ目を引く黄色の車体。富山とイルカの関係性は、いまだ解明できず。

3.きときとライナーの基本情報

高岡駅に着くと、南側(瑞龍寺口)にヴィヴィッドな色合いのバスが停まっていた。
一面雪で真っ白なロータリーにひときわ目を引く黄色に波模様のストライプが入った車体。
これこそが今回乗車させていただくイルカ交通の高速路線バス、その名も「きときとライナー」!

“きときと”って何なんだ? さっそくネット検索すると、「新鮮」とか「精力的」とかいった富山の方言らしかった。
なるほど、海の幸が豊かな富山らしい言葉だ。う~ん、ホタルイカが食べたくなってきたぞ。
先にご案内したとおり、イルカ交通「きときとライナー」は1日5便運行している。

僕が乗ったのは高岡駅前を12:20に出発する名古屋行き3便。
これを逃すと、最終の4便は18:25発までなくなってしまう。
(その場合は1時間後の13:20に加越能バスが出るから大丈夫なんだけれども)

水曜日の真っ昼間、いったいどれだけの人間が名古屋までバスを使うのだろう。
バス停に向かうと、先客たちが運転手さんに料金を支払っていた。
僕も3,500円を支払って黄色いバスへ乗り込む。

4.車内設備と道中の様子

車内は3列独立席。運転席側の車内中ほどにトイレに降りる階段があるタイプ。
30人乗りの一般的な路線バスのレイアウトだ。 あ、でも各座席にコンセントがついてる。やったアタリの車両だ! きときとライナー3列独立席

 ※全席に柔らかなブランケットも用意されていました

 バスの車両は便によっても、また日によっても異なることが多い。
事前にバス会社にコンセントはあるか、トイレはあるかと確認を取っていても、実際のバスは急に変更になったりする。
極端な話、3列シートと聞いていたのに4列シートになったりするのだ。

このケースは特に昼行便に多く見られる特徴で、コンセントがついていればラッキーと考える方が正しい。
思っていたバスと違う!と文句を言うのはちょっと待て。
昼の高速路線バスは、時間通りに安全に目的地まで届けてくれることが第一の使命と、乗客である僕らも腹をくくって臨もう。

などと、すっかりバスに造形深くなったなあと感慨にふけているうちに、定刻を迎えた「きときとライナー」はブルルンと微かにエンジンを唸らせ高岡を後にしたのであった。

きときと3列独立席

※旅に同行した不肖の後輩社員。180cmの彼を被写体にしたがために、めっちゃ窮屈そうに見えてしまう・・。

始発の『イオン高岡』から、僕の乗車した『高岡駅』の時点で、乗客は10人ほど。
おかげで周囲を気にすることなくゆったりと過ごすことができた。
週末や多客期でなければあわてて予約しなくても良さそうだ。

5.お得に移動するなら「きときとCLUB」会員

座席のラックには「きときとライナー」の会員募集のチラシがあった。
年会費1,000円の会員になれば、名古屋⇔高岡が500円OFFの3,000円で乗れてしまう上に、7回乗ると8回目の乗車が無料になるという特典があるらしい。
お客を囲い込む賢い戦略。

※ビジネスや帰省で年何度も利用するなら、断然お得な『きときとCLUB』。

高岡を出て下道を30分ほど走ったところで、砺波駅に到着。
ここでは新たに2名の乗客をピックアップ。全240kmの行程なので、乗務員さんは1名のみ。
到着するや、外でお待ちのお客様の元へ行き、トランクルームを開けたり、予約者名簿のチェックをしたり。
“運転手”ではなく“サービスマン”としてキビキビと働く姿に好印象。
都市部よりも地方の乗務員さんのほうが温かみを感じるのは、気のせいか。

きときとライナートイレ

※車内トイレ。寒さのせいか、けっこうみんな使っていた。

6.豪雪地帯での休憩風景

その後、20分足らずで4か所目のバス停である『小矢部』に到着。
ここでは1名が乗車。乗り込んだ中年のおじさんは、乗務員さんに往復の乗車券を求めていた。
どうやら車内で往復券も買えるようだ。
往復で6,500円だから、片道ずつ買うより500円割安になる計算。

高岡を発って1時間。バスは小矢部東インターからハイウェイへと突入。
一車線対向の東海北陸自動車道は一面の銀世界。
速度が上がったことで吹雪の様相を呈してきた景観の中、きときとライナーは何食わぬ顔をして目的地までひた走る。
途中の追い越し車線では、前を走る鈍足の軽を追い抜くほど。(法定速度内です)
さすが雪道に長けたプロドライバーは違うぜ!

見慣れぬ銀世界の道を飽きもせず見ているうちに、バスは最後の乗車地、『五箇山インター口』へ到着。
けれども、雪に埋もれたバス停のポールが立つだけで、人影はなかった。
バスは扉を開けることなく、再出発。

サ-ビスエリアで停車中のきときとライナー

※休憩中のきときとライナー。やっぱり目立つカラーリング。どこにいてもすぐに分かるので便利。

『五箇山』一帯は、急峻な山々が連なる豪雪地帯。
東海北陸自動車道は山間を縫うように作られ、トンネルの数も20か所以上。
まさに秘境といった雰囲気の中、抜けたトンネルの先に、突如として合掌造りの集落が現れた。

これが、世界遺産・・・!
知名度的には白川郷に劣るが、建っている家屋に遜色はない。
でもまさか高速道路のすぐ脇に立っているなんて。

あいにくシャッターチャンスを逃してしまい、ブレブレのハレーション画像しか残っていなかった。
掲載できないのが残念。
でも、本物を是非ともご自身の目で見に行っていただきたい。

ひるがの高原SA

※日本で一番標高の高い場所にあるサービスエリア。 って書いてあった。

7.名古屋に到着

東海北陸自動車道はいつしか岐阜県へ入っていた。
小矢部で高速動に乗って1時間半。高岡を出発してからだと2時間半。
ここで、唯一の休憩場所である「ひるがの高原サービスエリア」に停車。

何を隠そう僕の本籍は岐阜県。
岐阜といえども広大で、名古屋寄りの美濃地方と、北陸や長野寄りの飛騨高山に大別される。
美濃地方に住んでいた僕にとって、飛騨はまるで別世界の感覚だが、それでも10回は言った覚えがある。

特にひるがの高原は、つい数年前に夏にプライベートで来たことがある。
夏のひるがのは清涼で、空気が旨く、青々とし広がる高原地帯の彼方には悠久の霊峰白山を望むパノラマが印象に残っていた。

の、だが。真冬のひるがの高原は、人を寄せ付けぬ極寒の世界。
見渡す限りの深い雪に覆われ、駐車場からトイレに行くのも一苦労。
周囲は吹雪とガスで真っ白。これぞまさしく“白山”!

きときと_名古屋バス停

※出発から4時間。無事に名古屋に到着。

10分の休憩タイムの後、ひるがの高原サービスエリアを出発して、郡上を通過する頃には、険しい峰の連なりは遠ざかり、人工的な建物が目立つようになってきた。
道路も2車線になり、カーブに揺られることも少なくなる。

夜行バスではどうにも眠れない僕だが、濃尾平野に入ったころ、ふっと記憶が途切れた。眠らなければならないという強迫観念がない分、リラックスしていたのかもしれない。

次に目が覚めると、すでにそこは名古屋の首都高。
しかも、明道町インターを下道に降りるところだった。

しまった、寝てしまってた!明道町ってどこだ!?
慌てて携帯GPSをチェック。なんと、名古屋駅の1キロ手前・・・・・。
1時間ほども眠ってしまっていたことになる。

首都高を降りると、運転手さんの「お疲れ様でした、間もなく到着します」のアナウンス。
それでも泥のように眠りこける後輩を揺り起こし、終点『名古屋ミッドランドスクエア前』に降り立ったのだった。

名古屋は雪は積もっていなかったものの、小雨が路面を濡らしていた。
幸いミッドランドスクエアは名古屋駅の東側、桜通口・広小路口とは目と鼻の先。
すぐ近くの地下街に降りることで雨や雪に悩まされることはなかった。

きときと城端

※2015/3/14より乗降車地に「城端」が加わりました。

8.まとめ(良かった点、鉄道との比較)

こうして4時間あまりの「きときとライナー」乗車体験は終了。
あれほどの雪だったのにもかかわらず、定刻通りに運行したところから察するに、天候による速度規制なども計算済みのダイヤなのだろう。

僕が乗った名古屋行き3便(高岡12:10発)は3列独立シートでトイレもあり、コンセントもついていた。
快適すぎて、後輩の彼はほぼ4時間眠りっぱなしだったほどだ。

これが鉄道での移動ならどうだったのだろう。
JRで名古屋に向かった場合、日本海沿いに福井を南下し、一度滋賀県の米原を経由するルートとなる。

大回りしたうえに、乗り換えが必要。そのくせ費用は5,080円。
特急や新幹線に乗るなら特急料金がプラス3,000円はする。

つまり、バス代より5,000円追加料金を払っても、たった45分~1時間しか早く着かないということだ。
これなら1時間遅くても、3,000円程度で乗り換えの無いバスを利用したほうが断然お得感は高いと感じる。

2015年3月14日からは、新しく『城端サービスエリア』(富山県南砺市)がバス停に加わり、ますます便利になるイルカ交通の「きときとライナー」。
会員になればさらに安く利用できるようなので、富山⇔高岡の移動を検討するならば、選択肢の一つに加えてみてはいかがだろうか。

きときとライナー車体

※イルカ交通は高速路線バス「きときとライナー」車両5台のほか、貸切バス車両を26台保有している。

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