高級高速バスと言われる「コクーン」。興味はあっても、気軽に乗って試そうという人はなかなかいません。
コクーンの座席は、他にないかわった形。ちょっと面白そうだし、もしかしたらものすごく快適かもしれない。けど、もしその逆だったら?
料金もふつうの高速バスの2倍はするし、これでダメだったらショック過ぎです。そんな、「ちょっと気になるけど失敗したくない」という声をうけて、実際に乗ってみました!
ときには片道12,000円を超えることもあるコクーン。その価値があるのかを◎(すごくいい!)・○(けっこう満足)・△(普通)・×(ちょっとイヤかも)の4段階評価でチェックしてみたいと思います。
■目次■
【1】そもそもコクーンとは
【2】快適度チェック
(すわり心地・シートの横幅・足元の広さ・リクライニング・プライバシー)
【3】設備の充実度チェック
(プライベートモニター・コンセント・Wi-Fi・収納スペース・テーブル・トイレなど)
【4】お値段
【5】まとめ・総合評価
【6】予約方法
【1】そもそもコクーンとは
大手高速バス会社・WILLER TRAVEL(ウィラートラベル)が運行している高速バス。2014年9月現在、関東⇔関西、関東⇔名古屋で運行している夜行バス車両です。
普通のバスは定員約40名のところ、たった12席。1席ずつブースのように区切られています。さらに、各席に普通のバスには無い設備があれこれ用意されています。ざっと箇条書きにしてみても、
<電気系>
- VODシステム(地上波テレビ、映画、ゲーム、音楽などが楽しめる「プライベートモニター」)
- コンセント
- 電動リクライニングシート(電動ゆりかごリクライニング)
- ライト(読書灯)
- Wi-Fi
<シート周り>
- テーブルおよびカップホルダー
- 網ポケット
- ミラー
- 靴置きスペース
- 小さめ手荷物の収納スペース
- スーツ掛けフック
……この「あれもこれも」感。「コンセント付」など、一つひとつは他のバスにもありますが、ぜんぶ詰め込んだバスはなかなかありません。これらが、「高級シート」と言われる理由の一つです。
とはいえ、その分お値段も平均より高め。安くても大阪⇔東京間で6,500~13,000円ほど。新幹線と大差ない料金です。
他社の安い夜行バスなら3,000円台で移動できる距離ですが……さて、1万円ほど払う意味はあるでしょうか。
【2】快適度チェック
【2―1】すわり心地(クッション性)…寝やすくて○
普通のバスの座席シートよりは快適。体にフィットするように少しカーブしていたり、枕にあたる部分があったり、「寝る用の座席」として作られている感じがします。ただ、他の「高級バス」と言われる高速バスの中には、もっとクッション性が高いものもあるので、評価は「一般のバスよりは良い(○)」という感想でした。
【2―2】シートの横幅…普通のバスと同程度で△
期待したよりは、横幅は狭いです。 夜行バスとしては普通くらい。
公式サイトによると、「座席幅47cm、肘あり67cm」とのこと。腕は出せるものの、寝返りを打てるような横幅ではありません。ただ、隣に人がいないので、4列シートのバスなどよりは、気楽なのもたしか。料金や期待値からすると「△」という感想です。
【2―3】足元の広さ…身動きしづらく×
正直言って、狭く感じます。写真は実際に座って、自分の足元を撮ったもの。細長いスペースに足を入れるような形になるので、足を組んだり、姿勢を変えたくなって動いたりすると少し周りに当たってしまいます。
一人当たりのスペースが広いのも確かなのですが、構造的に狭く感じる。たまに当たる。これは盲点だったかも。
【2―4】リクライニング…思いっきり倒せて◎
140度リクライニング可能ということで、期待して倒してみると……いい!
乗る前は、「ベッドとかなら180度だし、椅子を深く倒したくらいかな」と予想していました。でも、140度全開で倒すと、かなり寝ている感覚に近いです。
そもそも、走行中のバスで平面(180度)に寝ると、揺れやすくて不安定になりそう。夜行バスなら140度が最適なのかもしれません。
もう一ついいなと思ったのが、後ろを一切気にせず倒せること。普通のバスは、たとえ140度倒せるシートでも、後ろの人にあたらない範囲でしか倒せません。コクーンなら、シートは自分のブース内に収まっているので、いつでも好きな角度に倒せます。これは◎!
【2―5】プライバシー…個室のようで◎
個室感は、今までいくつか「高級高速バス」と言われるバスを見てきましたが、イチバンだと感じました。
上の写真はWILLER TRAVEL公式サイトのものです。足元以外、他の席から見えない構造になっているのが伝わるでしょうか。
カーテンで区切られているバスは最近増えてきましたし、他の席から見えないという点では一緒です。でも、カーテンでなくプラスチックのようなパーテーションで区切られていると、一気に「自分の個室」感が増すんです。
実際に座席に座った視点から撮ってみた写真がこちら。
一つ目は消灯中。近くの席にパソコンなどを使っている人がいたはずですが、寝ている姿や、液晶の光はぜんぜん見えません。
次は消灯前。寝転がっている視点なのですが、やはり周りが見えません。この区切られている感、個室感、いい感じです。◎。
【3】設備の充実度チェック
【3―1】プライベートモニター…あれば便利という程度で△
各座席にモニターとゲーム用コントローラーが用意されています。
映画を見たりできて、国際線の飛行機に乗った時についているモニターのようなもの。
<内容>
- 地上波テレビ(フジテレビ系列 / テレビ朝日系列 / TBS系列限定)
- 映画(十数本から選べる。90年代の名作から昨年公開のハリウッド大作まであり)
- ゲーム(90年代前半にリリースされたテレビゲームなど。古い内容だが操作は分かりやすい)
- 音楽(ダンスミュージックからヒーリング系まで。インストゥルメンタル)
- オーディオブック(本の朗読)
テレビが見られるのは便利。
映画は、けっこう有名な作品もあり。ただ、これから寝ようと思っている人が、2~3時間の映画を見るのは、ちょっと次の日が心配です。
ゲームは、30~40歳くらいの人なら、「子供の時にあったなー」と思うようなレトロゲームです。(メガドライブとかにあった気がするラインナップ)
ちょっとした時間つぶしにはいいかもしれません。好きな人は意外とハマるかも。
音楽は、インストゥルメンタルをあまり聴かない人ならぴんと来ないかも。
朗読は、個人的には早く話の先を知りたいタイプなので、ゆっくり丁寧に読みあげられるのは性に合いませんでした……。
このプライベートモニターがあることで、「高級なバスに乗ってる!」という感覚は味わえます。
ただ、これでできることは、今ではほとんどスマホでも可能。
あったらテレビとか便利だけど、もし「プライベートモニター無しの席なら1000円安い」となったら、無しの席でいいかなあ……、というのが正直なところです。というわけで評価は「△」。
【3―2】コンセント…設置場所がよくて○
黒一色で見にくいのですが、写真の左側にある丸いところがコンセント差込口です。
テーブルの上にあり、これが意外と便利。ここ2年ほどで、コンセント付の高速バスはかなり増えました。ただ、たいていコンセントは座席の横にあるんです。
コクーンの場合、コンセントが座席正面・テーブルの上にるので、充電中のスマホをテーブルに置いておけます。小さなことですが、一晩過ごすことを考えると、けっこう便利。というわけで「○」。
ほかの高速バス充電設備について興味があればこちらの記事へ
>>コンセント付の高速バスで知っておきたい5つのこと – バスラボ
【3―3】Wi-Fi…softbankのみ対応で○
SoftbankのWi-Fiが利用できます。
Wi-Fiが使えない高速バスのほうがまだまだ多いので、使えるだけでもプラス評価ですが……他キャリアやPCを利用した方にとっては残念。評価は「○」、いつか主要3キャリアが利用できるようになったら「◎」という感想。
【3―4】収納スペース…小さめで△
足元に、靴の収納スペースと、手荷物収納スペース。座席の横(ブースを区切っているパーテーションの内側)に網ポケットがあります。
便利は便利なんですが、あまり大きくはありません。冬用のロングブーツだと、靴入れには折って入れることになります。
収納スペースも、ハンドバッグが入るかどうか、というところ。無いよりはいい、といった感じです。「△」
【3-5】 テーブル、カップホルダー…安定感ばっちりで○
プライベートモニターの下にはテーブルが用意されています。(折り畳み式)
これ、意外と使いやすい。
普通のバスにもテーブルがついていたりしますが、設置されているのは前の座席の後ろ側。前の人がリクライニングを倒すと、テーブルも動く……というタイプが多いんです。
でもコクーンだと、自分のブース内にあるため、他人の影響なし。カップホルダーも、前の座席の後ろ側についている輪っかのような不安定さがありません。
あえて難点をあげるなら、奥に広いタイプで横がやや狭い。ほとんどの人は問題ないと思いますが、ノートパソコンを使いたいならギリギリという感じ。全体的には、評価は「○」で。
【3-6】意外と無いトイレ…この料金で設置無しは×
「高級バス」というイメージからすると意外ですが、コクーンにはトイレがありません。
正直、私自身は今までトイレ付車両に乗っても、車内トイレを使ったことがないので、支障はないのですが……それでも、「いつでもトイレにいける」という安心感は、できれば確保したい。
車内トイレが必要かどうかは、個人差があります。
それでも、割高な料金設定を考えると、ほしかったなという感想。ここは、個人的には評価「×」で。
★「車内トイレが必要か不要か」「車内トイレはどんなかんじか」というトイレ詳細はこちらの記事で
>>>高速バスはトイレ付がいい?無しでもOK?よくある疑問を解決!
【3―7】その他…鏡や読書灯が○
他のバスにはない、小さな気配りもあります。
★鏡
座席の横(ブースを区切っているパーテーションの内側)にあります。
小さいし、揺れるのでメイクに使えるほどではありませんが、「SAの休憩で車外にでるとき、髪がぼさぼさになっていないか確認」といった程度なら便利。
人前で鏡を見て自分の顔・髪チェックって、ちょっと気まずいもの。ただ、コクーンなら人目を気にせず使えます。
★読書灯
テーブルを照らす、小さなライト。こういうのを使えるのは、個室ブース型ならではです。
まあまあの明るさで、長時間の読書には向きませんが、ちょっと何か読みたい、鞄の中を整頓したい、といったときに便利。
【4】お値段…予約時次第で△
東京~大阪間の料金を基準に調べてみました。
【9月23日時点・9月下旬~12月末発の料金】
最安値 | 大人 6,560円 (小児 4,100円) | 12月15日(月)発 |
最高値 | 大人 10,900円 (小児 5,450円) | 11月21日(金)発 |
※WILLER TRAVEL公式サイトより
WILLER TRAVELは、乗車日ごとの人気・残席数に応じて料金を変動させます。このため、料金は常に変わります。
コクーンは、たった12席しかないこともあり、調査日から1週間以内は満席でした。空席ありの1週間後、10月1日(火)は大人8,200円。今は6,000円台の最安値12月15日(月)発も、12月に入るころには値上がりしている可能性があります。
なお、過去には1,2000円台で販売されているのをみたことがあります。(人気の連休期間)
6,000円台でこの内容なら悪くないはず。ただ、ここまでコクーンの乗車レポートを見て、「3列独立シートのカーテン付があれば、それで十分かも」と思った方には、割に合わないかもしれません。
【5】まとめ・総合評価は○
【5―1】項目別評価
ここまでの評価をまとめてみましょう。
◎(すごくいい!)…2個
- リクライニング…思いっきり倒せて◎
- プライバシー…個室のようで◎
○(けっこう満足)…5個
- すわり心地(クッション性)…寝やすくて○
- コンセント…設置場所がよくて○
- Wi-Fi…あるのはいいけどsoftbankだけなので○
- テーブル、カップホルダー…安定感ばっちりで○
- その他…鏡や読書灯が○
△(普通)…4個
- プライベートモニター…あれば便利という程度で△
- 収納スペース…小さめで△
- シートの横幅…普通のバスと同程度で△
- お値段…予約時次第で△
×(ちょっとイヤかも)…2個
- 足元の広さ…身動きしづらく×
- 意外と無いトイレ…この料金で設置無しは×
平均すると、「普通よりちょっといい」という感じでしょうか。◎もあれば×もあり、乗る人によってけっこう評価が分かれそうだと感じました。また、料金が変わるため、予約したときの料金次第で満足度も大きく動きそうです。
【5-2】こんな人にオススメ
- 夜更かし派
- 小柄な方
- 旅を楽しみたい方
- ちょっと変わった体験がしたい方
- 車内で仕事などしたいことがある方
- 翌朝、予定がある方
まず、実際に乗ってみて、特に気に入ったのが「まわりを気にしなくていい」というとこ。
まだ眠たくないときは、スマホでゲーム。
そろそろ寝ようかなーと思ったら、そのタイミングでリクライニング全開。
SAに立ち寄った休憩時は外に出たので、戻す。
買ってきたドリンクを飲みたいので、SAを出発してもしばらくリクライニングは倒さず。しばらくしたらまた倒す。
なんというか、高速バスらしからぬ自由さです。私は夜更かしタイプなので、これは気に入りました。
乗客にはノートパソコンで仕事をする、という人もいたのですが、Wi-Fi対応・安定感あるテーブル・コンセント・遮光性があるこのシートは移動中も用事がある方には便利です。
女性の標準体型なら、狭さもそんなに感じないと思います。ネットでいろんなクチコミを見ていると、170cm台の男性も快適と書いていました。
また、思いっきりシートを倒せるので、寝心地がよく、今までの夜行バスの旅で一番疲れませんでした。
そして、ちょっとしたプレミアム感・非日常感が味わえるのもいいところ。
たった12席限定のシート、車内なのに個人ブースのような感覚。そして、不思議な照明。
ただ寝るだけでなく、高速バスでの移動も旅の一部として楽しみたい、という方には一度乗っていただきたいです。
【5-3】こんな方は要注意
- 体型が大きい方
- 狭い空間が苦手な方
- 車内トイレがほしい方
- 夜行バスに乗る理由が「安さ」な方
乗る前のクチコミで、「狭い」「男性はキツイ」という情報がありました。
「普通40人乗っているバスを12分割して狭い??」と、乗る前は正直ピンとこなかったのですが……乗ってみて感じたのは「確かに、これは……狭いかも」。
まず、ブースのように区切られていると、少し圧迫感がある。一人あたりの面積は広いはずなのに、視野が開けていないと狭く感じます。
さらに、足元が狭い。女性の標準体型(身長約160cm)の私でも、足元だけはちょっと不便に感じました。これは体格がある程度大きい方にはきついかもしれません。
料金も、普通の夜行バスの倍以上はします。人気の連休や週末なら、新幹線と大差ありません。夜行バスでないと時間の都合上厳しいのならともかく、料金が高い日程に夜行バスに乗るなら、新幹線と比較したほうがよいでしょう。
【6】予約方法
以下の予約サイトで申し込めます。
WILLER TRAVEL | 公式サイト。どのサイトよりも早く、先の日程が予約可能になる。ポイント還元あり (自社独自ポイントシステム…乗車代金1%相当をポイント還元+Pontaポイント…乗車代金0.5%相当をポイント還元) |
楽天トラベル高速バス | 楽天ポイントの利用・付与が可能。 乗車代金の1%相当をポイント還元 |
高速バスドットコム | ネット予約で乗車代金の2%相当をポイント還元。電話予約もOK |
皆様の感想、コメントなどお寄せください